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moguestの思いつき備忘録

ふと思いついたことや見知った数理工学系の知識をためていく予定のブログです.面白ければなんでもあり.

あなたは何通り知っている?ガウス積分の導出2

前回の記事
moguest.hatenablog.com
の続きです(前回は本題に入る前に終わってしまったようなものでした…).

今回取り上げる導出方法は,ウォリスの公式と呼ばれるものを用いる方法です.
あの高木貞治の『解析概論』に載っているレベルなので,これも比較的メジャーな方法でしょう.
というか,下の証明は『解析概論』第4刷のP.125~127ぐらいにほぼそのまま載っています.


【証明2】ウォリスの公式を用いる方法
$n$を自然数として,
\[
S_n=\int_0^{\frac\pi2}\sin^n xdx=\int_0^{\frac\pi2}\cos^n xdx
\]
を考える.この積分は部分積分を利用して漸化式を立てれば
\begin{align}
S_{2n}&=\dfrac{2n-1}{2n}\cdot\dfrac{2n-3}{2n-2}\cdot\;\cdots\;\cdot\dfrac12\cdot\dfrac\pi2,\\
S_{2n}&=\dfrac{2n-2}{2n-1}\cdot\dfrac{2n-4}{2n-3}\cdot\;\cdots\;\cdot\dfrac23\cdot1
\end{align}となることが知られている.また,被積分関数を考えれば$S_n$は単調減少な数列であり,
$S_{2n}$と$S_{2n+1}$は同じように減少して0に収束する.つまり,$\lim_{n\to\infty}S_{2n+1}/S_{2n}=1$.
その現象の仕方は大まかには$1/\sqrt{n}$程度のオーダーで,具体的には,
\begin{align}
\lim_{n\to\infty}\sqrt{n}S_n&=\lim_{n\to\infty}\sqrt{nS_{2n}S_{2n+1}}\\
&=\lim_{n\to\infty}\sqrt{n\cdot\dfrac{\pi}{4n+2}}=\dfrac{\sqrt{\pi}}{2}
\end{align}
と計算できる.

さて,ここからガウス積分の導出の段階に入る.この積分$S_n$を用いて,積分
\[
I=\int_0^\infty e^{-x^2}dx
\]を評価することを考える.

まず,$e^a\ge 1+a$というたいへん重要な絶対不等式を使って*1
この式に$a=x^2$やら$a=-x^2$やらを代入して式変形すると,
\begin{align}
1-x^2 \le e^{-x^2} \le \dfrac{1}{1+x^2}
\end{align}
という関係が成り立つ.さらに両辺をn乗して上の式を用いれば,積分に関する式


\begin{align}
\quad\int_0^1(1-x^2)^ndx &\le \int_0^1 e^{-nx^2}dx \le \int_0^{\infty} e^{-nx^2}dx \le \int_0^1\dfrac{1}{(1+x^2)^n}dx
\end{align}

が成立する.


\begin{align}
\quad\int_0^{\infty} e^{-nx^2}dx&=\dfrac1{\sqrt{n}}I
\end{align}

であることから,
\[
\sqrt{n}\int_0^1(1-x^2)^ndx\le I \le \sqrt{n}\int_0^1\dfrac{1}{(1+x^2)^n}dx
\]という評価式が立てられる.
\begin{align}
\int_0^1(1-x^2)^ndx&=\int_{\frac{\pi}{2}}^0(1-\cos^2\theta)^n(-\sin\theta)d\theta\\
&=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2n+1}\theta\; d\theta=S_{2n+1},\\
\int_0^1\dfrac{1}{(1+x^2)^n}dx&=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{1}{(1+\tan^2\theta)^n}\dfrac{d\theta}{\cos^2\theta}\\
&=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\cos^{2n-2}\theta\; d\theta=S_{2n-2}
\end{align}となり,結局
\[
\sqrt{n}S_{2n+1} \le I \le \sqrt{n}S_{2n-2}.
\]
両端の辺は$n\to\infty$でともに$\sqrt{\pi}/2$に収束するという話だったから,高校数学風に言うと,挟みうちの原理で
\[
I=\dfrac{\sqrt{\pi}}{2}
\]が示された.$e^{-x^2}$は偶関数であるから,
\[
\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx=2I=\sqrt{\pi}
\]が成り立つ.


ウォリスの公式というのは,上の$S_n$から簡単に導かれる
\[
\dfrac2\pi=\prod_{n=1}^\infty \left(1-\dfrac{1}{(2n)^2}\right)
\]
という式のことです.別に上の式を使ったわけではないので,ウォリスの公式を使ったというのは正式ではありませんが,
ウォリスの公式に関連する積分を用いて工夫して評価した,ということですね.

広義積分がある点では微妙ですが,基本的には高校数学の範囲内で示すことができることが,この証明の魅力です.

それにしても,MathJaxは使いづらい…
たまにTeXのコードでちゃんと数式になってくれないときがあるんですよね…

*1:Taylor の定理から示せばOK.他の方法でももちろん示せます.